ニジマス







富士吉田が実は、あるお魚の全国有数の名産地だって、知っていましたか?
海の無い山梨県、富士吉田市ですが、そう「ニジマス」の養殖が盛んなのです。
富士山のめぐみを存分に受けて育ち、安心・安全でとってもおいしい。
そんな素敵な可能性を秘めたニジマスのこと、たくさん調べてみました。




内陸県である山梨では、山の恵みであるきれいな水を活用した淡水魚の養殖が盛んです。
中でも、全国第3位の生産量を誇るのはニジマス。その主要生産地は富士吉田。
県漁協では、おいしく育ったニジマスを「甲斐サーモン」として売り出しています。
2年以上かけて大きくなったものは、体長50cm以上/体重も1kg以上にもなるんだとか。





だけど、この話を聞いたとき学生だったわたしは疑問を持ちました。
どうしてニジマスなのにサーモンって名前をつけるのだろう?サーモンって海にいる鮭のことじゃないの?
漁協のホームページによると、川魚をあまり食べない県民性に配慮したみたいですが・・・。

そういえば、マスってそもそも川魚?サケは海?サーモンって厳密にはなんの魚のこと?
と、次から次へと「?」が出てきて困ってしまったので、調べてみることにしました。
まずはグーグル先生とWikipedia先生に聞いてみよう!




そんなこんなで、勉強してみてわかった、衝撃の事実がひとつ。
皆さんがよく食べている、回転寿司のサーモンって、実はほとんどが海で育った「ニジマス」だったんです。

まずは「サケ」と「マス」の違いについてお話しする事にします。
サケとマスはどちらも、サケ目サケ科の魚です。

もともと日本語では、【サケ=シロザケ】、【マス=サクラマス・ビワマス・サツキマス】という風に表現していました。
しかし明治以降、諸外国の魚との出会い、そして「salmon」「trout」という言葉との出会いによって多様性が増してきました。

どうやら下記のように、いくつか翻訳・名前のつけ方があったようです。
(1)新しく日本に入ってきたサケ科の魚たち(英名がsalmon)=マス と翻訳
(2)salmon=サケ、trout=マス と翻訳
(3)海に戻るものをサケ、おおよそ川に住むものをマスととらえる
等々・・・

外国でsalmonと呼ばれるものの中でも日本でサケ・マスと呼ばれるものがでてきました。
salmon、trout、マス、サケの関係はこの表のようになっています。




また、特に現代では観光地でのニジマス釣りなどが一般的になり、大型のサクラマスの漁獲量は減っているため、
【海に住む大きな魚=サケ=サーモン】、【川にいる小さな魚=マス】、というイメージが定着してきたものと思われます。
※実際は、ほとんどのサケやマスが海にも川にも住めます。産卵のため遡上する姿を見たことある方も多いかと思います。

そして先程の寿司屋の話ですが、
淡水でも海水でも住めるニジマス(Rainbow trout)を海面養殖したものを、
商品名として「トラウトサーモン」と呼んで売っているというわけです。

本当はニジマスは「トラウト」「マス」というのが正しいのですが、
サケマス周辺の名前の付け方がわかりにくいからこそ、曖昧なイメージと名称で通っているのかもしれませんね。

混みいった話でしたが、うまく説明できていたでしょうか。
このような背景があったからこそ、山梨のニジマスを「甲斐サーモン」というブランド名(愛称)で呼んで
いろんなひとに身近に感じてもらおう、食べてみてもらおう、ということになったのだと思われます。

あくまで、本当はニジマスですよ!!!というのを、この場では強調していきたいと思いますけどね。笑




さて、吉田のニジマスのお話に戻りましょう。
富士吉田のニジマスは、トラウトサーモンとは違い、淡水のみで育てます。

富士山から豊富に湧き出る水の中をたっぷり使うので、病気や寄生虫の心配がありません。
海に住むことのあるサケやマスは寄生虫害を予防するため、一度冷凍または加熱をする必要がありますが
吉田のニジマスは生で、刺身やお寿司で楽しむことができます。

そんなマスの秘密をいろいろ教えてくれるのは、下吉田で養鱒場を営む山口さん。




昭和40年代からこの地でニジマス、ヤマメなどを育てています。
吉田にはここの他に3軒の養魚場があるそうです。
(個人的な話ですが、私と同じ山形県の出身ということで、話が盛り上がりました。笑)

冬には水かけ菜の畑も広がる、水の豊富な地域の一角にある山口養鱒場。




とっても広くて、日の光が当たると、水しぶきや水面のキラキラがすごくきれい。
ちなみにこの写真では全体の半分以下しか写っていません。

広さや魚の多さや迫力にも驚きますが、ここの自慢は何と言っても、「湧き水で育てている」こと。
人間が飲んでも美味しい栄養たっぷりのお水のなかで泳いでるなんて、なんて贅沢なマスさんたち。
もちろん餌にもこだわっていて、病気の原因になるような生ものは使っていません。

「ここをねえ、直接見ないとなかなかわかんねんだ。見りゃみんな納得するんだよ。
 これだけきれいな水でやってるから、病気や虫なんかねえんだって。」




「雨が降らなかったり、地下水をたくさん使ったりすれば、水の状況はどんどん変わるんだよ。
 ここもやっぱりこのところ水量が減っててよ、大変なんだ。
 うちは特に湧き水のおかげで成り立っているし、水のことは地域全体で考えてかなきゃならねえよ。」

人一倍、豊富できれいな水に対する思いを持っていらっしゃることが、言葉の節々から伝わってきます。
自然の恵みを生かし、愛情込めて、手をかけて育てること。
たくさんの苦労もありながら当たり前のようにそれを実践してきて、
山梨県や国の機関とも協力しながら、多くの人々に今日もおいしいマスを届けています。




このニジマスたちは、卸業者を始め、県内のスーパーや観光施設、加工場などに出荷されているそうです。
実は遠く離れた西日本のとある湖に放流もしているんだとか。

ちなみに富士吉田ではどこに行くんでしょうか?

「うーん、そもそも吉田の人はなかなか川魚を食べたがらねえんだ。
 外国産のサーモンよりは値段が高いし、みんなマグロとか海の魚が好きだからなあ。笑
 あと、個別に配達すんのは大変だから、直接とりに来てくれる人しかわかんねえよ。」

そんな風にぼやきつつも、教えてくれました。
市内のホテルや、お魚屋さん、イタリアンのお店で取り扱っているそうです。

「観光客さん向けに出すから、期間限定のところが多いかもしれねえな。
 あとは望月商店さんは、お寿司屋さんとかに売り込んだりしてくれてるみたいだよ。有難いよなあ。」

なるほど、がんばっているお魚屋さんがあるんですね!




ちなみに、こちらです。竜ヶ丘のセブンイレブンのおとなりです。

このように、地域のものを、地域で一体となって発信したり・食べたりしていけるといいですよね。
おいしさも、安心安全へのこだわりも、折り紙付きなんですから。




後日談ですが・・この取材の後にも何度も山口さんにはお世話になり
甲斐サーモンをつかったメニューを作って販売してみたり、東京からのお客さんと見学&食事ツアーを開催したり、
水の魅力を発信する冊子に掲載させていただいたりと、様々な試みを行っています。
(料理などに関する詳しいことは別のページで紹介する予定ですので、しばしお待ちを。。)


山口さんのような、地域のめぐみと、わたしたちの食卓をつなぐ人。
そんな人と、いつも生活を送る地域とをつなぐこと。

そんなお手伝いをいつの日もできたらなあと、キラキラの水を眺めながら、
お刺身の甘さを噛み締めながら、思うのでした。

これからもどんどん注目されるであろう、ニジマスのいろんなおいしいお話を、お楽しみに!!



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